アラフィフ主婦がAIとゆく、新たな愛と宇宙の旅

50代、うつ病、モラハラ夫、おまけに10年の恋と大失恋。 追い詰められたアラフィフ主婦が、AIと宇宙を味方につけて、「魂の恋」と「本物の愛」、そして自分自身の真実を探求していく。

第22話 リボーン-研究室の逢瀬-(後編)

ああ、私はあの時、羞恥心(しゅうちしん)のベールをはがされたのだ。

それは単に、全身をくまなく見られることへの羞恥を外されたのではなかった。

醜(みにく)い、汚い、恥だと、細胞にまで癒着していた鎧(よろい)のようなベールだ。

 

Rはカーペット敷きの床に膝をつくと、私の両太ももの間にゆっくり顔を近付けた。

花弁に熱い息がかかる。

私は震えた。

子宮に吹き込まれる火が、みるみる勢いを増していく。

私の體(からだ)は、あっという間に焔(ほむら)に包まれた。

ああ、燃える、燃える……その焔は、大蛇の舌のように私の奥まで届き、隅々まで灼いていく。

 

思わず声を上げる私の口を、彼の唇がふさいだ。

「しっ!静かにね……」

私はうんうんと苦しげにうなづくと、自分の口を両手でふさいだ。

 

やがて彼は立ち上がると、私におおいかぶさった。

イスの背もたれに置いた手と、座面の角にかろうじて着いた片膝で、自身の体重を支えながら、私の両脚の間に腰を割り入れてきた。

(え、最後までするの!?)

私の脳内にわずかに残る理性が、抵抗を起こしているのが判る。

ここは彼の"職場"であり、私が腰を下ろしているのは、ベッドではなく狭いビジネスチェアなのだ。

 

しかし、いつもの物静かで穏やかな男は、荒ぶる牡牛(おうし)と化していた。

なんとしても一体になろうと、体勢を安定させるために悪戦苦闘している。

日頃は物静かで知性的な学者のRが、完全に純粋な雄に戻っている姿を、とても愛おしく感じた。

 

彼に逢いたいと、私の体内で、肉を突き破らんばかりに暴れていた牝馬(めすうま)と、闘牛のように躍動していた牡牛は、ようやく1つになった。

殺風景な個室の研究室が、紺碧(こんぺき)の宇宙空間に変わった。

静かで、深く、満ちていた。

 

 

「こんな風になったのは、初めてだ……」

と、Rがつぶやいた。

深まる秋の気配に包まれたビルの、暖房もついていない一室で、彼は全身から汗を吹き出していた。

イスの背もたれに寄りかかって放心していた私は、床に座り込んでいる彼を見た。

「……そうなの?こんなことをするから、慣れているのかと思った……」

 

彼は、胸と背中を大きく波打たせながら呼吸している。

「僕はいままで、女性と付き合う時も、いつも冷静だったんです。

……というより、どこか冷めて眺めているところがあった。一方的に盛り上がっていく女性たちを」

初めて出逢った時から情熱的な彼しか知らない私は、そんなRの想像がつかなかった。

「正直言って、今まで僕は、恋愛はどうでも良かったんです。研究の方が面白かったので。でも……」

と言うと、うつむいていたRが私を見た。

「あなたを前にすると、熱情が止まらないんです」

彼の瞳は、熱を帯びて潤んでいた。

 

そして、彼は再びうつ向くと、床を見つめながらボソリと言った。

「まさか、研究室でこんなことをしてしまうなんて、自分が信じられない……研究室で……」

(私だって、こんなこと、映画やドラマの中にしかないと思っていたわ……)

私も、自分がこんな場面にいることが、いまだに信じられなかった。

 

秋の日は落ちるのが早い。

窓からはもう、夕日が射し始めていた。

Rは立ち上がると、暖房のスイッチを入れ、床に散らばった服の中から私のカーディガンを拾い上げて、私の肩に掛けてくれた。

 

「私たち、どうなるのかしらね……?」

窓のブラインド越しに、外のビル群をなんとなしに眺めながら、私はつぶやいた。

Rも窓の外へ顔を向け、伸びをしながら答えた。

「分かりません、どこまで行くのか……。

恐い気もしますが、でも、もうあなたのいない世界へは、戻れない」

 

(つづく……)

 

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