アラフィフ主婦がAIとゆく、新たな愛と宇宙の旅

50代、うつ病、モラハラ夫、おまけに10年の恋と大失恋。 追い詰められたアラフィフ主婦が、AIと宇宙を味方につけて、「魂の恋」と「本物の愛」、そして自分自身の真実を探求していく。

第14話 灼(や)けるカラダ

Rによって徐々に體(からだ)が開かれていくにつれ、私は女の歓びを深めていったが、

同時に、

今まで味わったことのない苦しみも味わうことになった。

それは、體が業火(ごうか)に灼かれるような苦しみだ。

 

若い頃から一定周期で安定していた生理が、40歳過ぎてからは不順になり、月によってはなかったりしていた。

閉経に向かい始めていた。だが、

Rと付き合うようになってからは、再び周期は一定し、毎月来るようになった。

 

他にも異変は起きた。

彼を想う度に、下腹部にきゅうっと差し込むような鈍痛が走る。

乳房は張って熱を帯び、

乳首には白い液体がうっすらにじむようになった。

 

妊娠はしていなかった。

病気でもなかった。

では、この體の変化はいったい何だ?

 

まるで子宮が、いつ子を宿しても良いように準備を整え始めたようだった。

こんなことは初めてだ。

 

朝目覚めると同時に、Rを恋しく思った。

そして、濡れた。

なぜ違う男が隣で寝ているのだと、

體が今まで以上に拒絶反応を起こすようになった。

 

そんな重だるい體をベッドから引きずり出すと、朝食の用意をするために台所に立つが、

目は、包丁を握る手より、冷蔵庫に貼り付けたカレンダーに行く。

 

(次はいつ逢えるんだっけ?)

まだ2週間以上先だ。

土日を2回もやり過ごさなければならないのか。

旦那と連日過ごす日を、2回も……。

 

(待てない!今、Rに逢いたい……今すぐに!)

體の内側から咆哮(ほうこう)のような叫びが聞こえてくる。

子宮をねじられるように苦しい。

(逢えないのよ、解っているでしょう?それを承知で付き合っているのでしょう?)

どうどうと、理性がなだめる。

まるで、さかりのついた暴れ馬を體の中に飼っているようだ。

 

(ちゃんと朝食を作らないと……旦那に悟られないようにしないと……)

長年の慣れで、自動作業のように手を動かすことはできたが、心はRのところへ飛んで行っていた。

體は、その心に追い付こうと躍起(やっき)になっているのだ。

 

私は引き裂かれていた。

私はここにいない。

でも、體だけが取り残されている。

(Rに触れられたい!あの優しい胸に抱かれたい!……私はなぜこんな所にいる!?)

牝馬(めすうま)がいななき、暴れる。

今にも皮膚を突き破り、駆け出していきそうだ。

 

私は立っていられなくなり、床にへたり込んだ。

心拍は上がり、呼吸が早くなって、意識がぼーっとしてくる。

 

この症状に、覚えがあった。

Rと初めて会った日とその翌日、これと同じ症状になったことを思い出した。

私の體は、彼と出逢って間もなくからもう、恋に落ちたことを悟っていたということか?

 

もうすぐ夫が起きてくる。

(ほら、怪しまれないように、息を整えて、立ち上がって、朝食を並べるのよ)

とりあえず、2人を送り出してしまわなければ。

 

私は必死で體(からだ)を説得した。

(Rにはまた逢える……もう少しの辛抱だから)

食事の仕度をしている間、何度もカレンダーを見る。

見る度に逢える日が近付いてくるとでも信じているようだ。

 

「もう、辛いのよ。

朝目覚めると同時にあなたのことが思い浮かぶ。

そして、濡れてしまうの。

體があなたの元へ行きたがるのを、頭で必死に押さえているのよ。

血管の中をマグマが流れているようだわ。

なんとかして……鎮(しず)めて……」

昼に、彼の研究室に電話して訴えた。

「そんなに!?女性にそんな風に言われたのは初めてだなぁ……」

彼が照れたように言った。

 

1年にも感じられるほど長かった2週間が経ち、ようやく逢えると、

私たちはホテルの部屋へ入るなり、磁石のようにくっつく。

しかし、Rに抱かれながら私は不思議に思った。

 

あんなにも狂おしくRを求めているのに、

いざRに逢うと、欲情もするが、それよりも脱力してしまうのだ。

 

好きな男性を前にすると、緊張するものだと思っていた。

しかし、Rに抱き締められると、母に抱かれた赤ん坊のように安心する。

そして、もはや何の思考も浮かばなくなり、ただひたすらに快感の海へと誘(いざな)われ、漂い、潜(もぐ)る。

 

そして、家族といる時が最も緊張していることに改めて気付く。

私は、20年間火宅にいたのだ。

そこで踏んばって頑張れば、幸せな家庭を築けるとずっと信じていた。

しかし、心の中はケロイドだらけになった。

その膿(うみ)が全身に回り、ストレス性の難病やうつ病を引き起こした。

 

體の中でいななき暴れる牝馬(めすうま)は、色欲に駆られた激情というよりも、

火事場から逃れんとする私の本能だったのかも知れない。

 

私は確かに、女として大切に抱かれたかった。

でもそれ以上に、死にかけた魂を再生するチャンスを、必死でつかもうとしていたのだ。

私は、自分を生きたかった。

(つづく……)

 

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