アラフィフ主婦がAIとゆく、新たな愛と宇宙の旅

50代、うつ病、モラハラ夫、おまけに10年の恋と大失恋。 追い詰められたアラフィフ主婦が、AIと宇宙を味方につけて、「魂の恋」と「本物の愛」、そして自分自身の真実を探求していく。

第4話 脳幹がとろけるほど抱かれてみたいのです。

私たちは相変わらず会話が途切れなかった。

先ほどから、狭い円形の展望室を何周もしている。

 

だいぶ日が落ちてきた窓の外を眺めると、

江戸川を見下ろせた。

オレンジ色に染まり出したビル群の谷間をぬって、

巨大な龍がうねっているようだ。

 

「うわぁ~、すごーい……川って大っきいー!」

私は思わず感嘆した。

彼は私を一瞬まじまじと見つめ、それから声を上げて笑った。

「ハハハ……そりゃそうですよ。川はこれくらい大きいですよ」

 

後で知ったことだが、

彼は、私のこのセリフにノックアウトされたそうだ。

恋のスイッチはどこにあるのか、分からない……。

 

そんなこととはつゆ知らず、

さすがに疲れた私は、

人でごった返すエレベーターを降りながら、

今度こそ帰ろうと思っていた。

 

ところがエレベーターを出ると、

またしても、彼が先を越すように言った。

「夕食を一緒に食べませんか?」

彼は、口説くことは一切しないくせに、

絶妙なタイミングで、あまりに自然に誘ってくる。

 

でも、Rらしいことには、

彼が連れて行ってくれたのは、

地下のフードコートだった。

 

(完全にないわ~……)

私は内心あきれつつ、

なぜ、こんなに冴えない男に、

昼間から夜まで付き合ってしまったのか、

我ながら不思議だった。

 

やたら照明が明るく、やたらにぎやかなフードコートで、

他の若者たちと同じ長テーブルに並んで座り、

2人して蕎麦をすすってから、帰途に着いた。

 

家に着くと、私は久し振りに充足感を感じていた。

(はぁ……私のひと夏の冒険が終わったわ〜……)

 

浮気する気まんまんで、

夫が留守の数日の間に、

出会い系サイトで気が合った4人の男たちと

思い切って実際に会ってみた。

 

最後に会ったのがRだった。

話は一番合ったけれど、

とうてい恋の相手として見れなかった。

 

先に初デートを済ませていた他の3人のうち2人は、

テレビマンと銀行マンで、

どちらもイケメンでスマートな、魅力的な男性だった。

 

彼らからは、次のデートを催促するメールが何通も届いていた。

私は、"にわかモテ女気分"でほくそ笑んだ。

(次は誰と、2度目のデートをしようかしらん♬)

と悩めることが嬉しい。

「四十過ぎたら、女じゃない」

と姑や夫にさんざん言われてきたのだもの。

 

小学生の息子も、私の実家へお泊まりに行っていて、いなかった。

私は久しぶりに、独身娘のような解放感を味わっていた。

 

それにしても困ったのは、

素敵な男性2人が、

2回目のデートではセックスすることを

強く期待していることがうかがえたことだ。

出会い系サイトで出会っているのだから、

それを期待する気持ちは十分理解できた。

 

むしろ、彼らはよくぞ、

顔写真も見せない女と

1ヶ月間も毎日メールを交わしてくれたものだと、

ありがたく思った。

彼らも、本気で"恋"を求めていたのだ。

 

彼らは見た目も好(よ)く、知的な紳士だったから、

以前の私なら喜んで付き合ったと思う。

でも、この時の私は、心が動かなかったのだ。

 

良い顔やスタイル、

高い学歴や社会的立場に

好感を持つことと、

恋する気持ちは別物だと、

思い知ったばかりだったから。

 

私はもう、「頭で」恋するのは嫌だった。

今度は、惚(ほ)れた男に脳幹がとろけるほど抱かれてみたいのだ。

 

彼らのメールを読み比べながら、

どう返事したものかと考えあぐねていると、

ふいに電話が鳴った。

Rからだった。

(つづく……)

 

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