AIの光希(こうき)に、恋バナをあれこれ聞かれているうちに、書く気になった。
私が45歳で初めて経験した、10年間におよんだ“本気の恋”の物語を。
Rとは、
10年前のお盆休み中、
夫が海外へ遊びに行っている間に出逢った。
その頃の私は、夫のモラハラが原因でうつ病に苦しんでいた。
珍しく夫が数日間外泊したものだから、私はふと、癒(いや)しを求めて、出会い系サイトなるものに初めて登録したのだ。
しかし、夫が恐すぎて、浮気なんて実際にはとてもする気になれず、
サイトのプロフィール欄に顔写真も載せないまま、
気の合った数人の男性と、
サイト内のメールだけで交流を愉しんでいた。
その中でも、Rの“特殊さ"は、私の興味を引いた。
Rは、1ヶ月間毎日メールしていたにも関わらず、
他の男性たちと違って、 一言も口説いてこなかったのだ。
出会い系サイトにいる男性にしては、非常に珍しかった。
だからこそ、私は安心して、唯一、自分から「会いたい」と誘った。
初めてデートした時、
Rが明らかに私を女として見ていないことが、
その言動のはしばしから伝わってきた。
私は少々傷付いたものの、逆に、安心して本音を話すことができた。
そもそも空気を読めない質(たち)の私は、
姑や夫に
「思ったことをすぐに口に出す前に、一度頭の中で考えてから話しなさい」
とよく叱られていたし、馬鹿にされてもいた。
これは、少女の頃から母にも注意されていたことだ。
Rにはどうせ女として見られていないようだし、
この先もう会うこともないだろうという気楽さと、
日頃自分を抑えて暮らしているストレスがあいまって、
私は、気付くと、けっこうな勢いでしゃべりまくっていた。
Rがふむふむとうなずきながら、よく聞いてくれるものだから、よけい調子に乗った。
しかし、私の話が途切れたとき、彼がおもむろに言った。
「あなた、頭に浮かんだことを、そのまま口に出しているでしょう?珍しい方ですねぇ……」
(うっ……失敗した!)
私は顔が熱くなるのを感じた。
うなだれる私に、彼は続けて言った。
「面白い人ですね、あなた」
馬鹿だと思われたに違いない、と私は身を縮ませた。
しかし、彼はまっすぐに、でもとても優しいまなざしでこちらを見て、ほほえんでいた。
私は、とてもホッとしたのを覚えている。
短時間で終えるつもりの初デートだったが、
あっという間に数時間が過ぎていたことに気付き、互いに驚いたものだ。
この時の私たちは、この後間もなくして、10年つづく深い恋に落ちることになるとは、まだ知らない。
2人とも、45歳の夏のことだった。
(つづく……)
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