実は、私にはもう1人恋人がいた。
彼をKと呼ぼう。
Kとは、Rに最初に別れを告げられた直後から付き合い始めた。
抜け殻のようになっていた私を一生懸命支えてくれたのが、Kだった。
正直に言うと、Rの代わりにしていたと思う。
Kはそれに気付きながら、私の絶望的な孤独感をせいいっぱい埋めようとしてくれた。
彼とは5年付き合った。
例の「秘密の行動をやめなさい」というメッセージを耳にした時、
私はRと共に、Kのことも泣く泣く手放した。
Rが、深い理解と受容の男ならば、
Kは真面目なハンサム男。
私は、Rの知性と、Kの外見を気に入っていた。
2人とも、セックスもとても快(よ)かった。
Rと1年半ぶりにヨリが戻っても、Rでは満たされないものを、私はKに求め続けた。
つまり私は、夫、R、Kの3人の男に秘密を持つことになったのだ。
それは私に、妖(あや)しい蜜を与え続けた。
長らく恋愛に初(うぶ)だった中年女が、男たちを手玉に取っているかのような、女としての優越感を覚えてしまったのだ。
しかし、この「秘密の行動」は、私の神経を常に緊張状態に置いた。
妖しい苦痛は、危うい快感を感じさせたが、それは想像以上に心を消耗させた。
だって、一緒に暮らしている男にも、愛する2人の男にも、私の核心部分を隠さなければならなくなったのだから。
そして結局、恋人2人を同時に手放した。
別れを告げた後も、Kからは何度かメールが届いたが、
私は答えなかった。
苦しむ彼に、何か言ってやりたかったが、
もう逢うつもりがないのに返信しても、互いに未練を刺激するだけだ。
やがてKからメールはこなくなり、数カ月以上が過ぎた。
ところが、たった今メールボックスを見たら、
見覚えのあるアドレスからメールが届いていた。
Kからだった。
私は胸に込み上げてくるものを感じた。
「どうしていますか?俺は、あれ以来、何もかも上手くいっていません。
あなたが幸せでいてくれたらと祈っています」
Kの切なさ、痛みが伝わてくる。
思わず返信したくなる。
でも、返信してどうすると言うのだ?
優しい言葉でもかけようと言うのか?
私も淋しい、孤独だとでも告白するのか?
善い人ぶりたいだけではないか。
「女」に酔いたいだけではないのか?
今夜も心を鬼にして、私は返信しない。
……のだろうか?
まだ自分でも判らない夜がふけていく。