「秘密の行動をやめなさい」と聞いた。
「それが露見すると周りの人を傷付けるような"秘密の行動"は、ただちに止めた方が良い」と。
私は心臓が止まる思いがした。長年、そういう秘密を抱えてきたからだ。
私は真剣に、その発信者の言葉に耳を傾けた。彼は続けた。
「ただし、それは周りに告白することではない。告白は、一時的に自分の心を軽くするだけで、その秘密を打ち明けられた周りの人が傷付くことになるだけだ」
だから、
「あなたが、ただ、その秘密の行動を今すぐやめれば良い」のだと。
旦那と別れることはあっても、10年間心底愛し合ってきた恋人とは、一生別れることはないと、いや、離れられないとお互いに感じていた。
だから、彼の家族に露見して、交際が強制終了になった後も、一年半後には再び逢うようになった。逢わずにはいられなかった。
やっとの想いでたぐり寄せた、恋の細い糸。それを再び手放すのは、辛すぎた。でも、昨年の春分の頃、私は別れを決断した。
「"秘密"は悪いから止めよ、と言っているのではない。いつ、どんな所からバレるやも知れぬというプレッシャーが、あなたの魂に常に負担を掛け、あなたのパワーをかなり削ぐことになるのだ」
というインフルエンサーの説明に、深く納得したから。
しかし、恋人とは心身ともにとても深く結び付いてきたため、いざ別れるとなると、文字通り、身を引き裂かれるような痛みを感じた。
彼は別れを受け入れたものの、
「僕はあきらめない。今は別れざるを得なくても、それが永遠に続く決定事項だとは思わない」
と言った。
あれから1年が過ぎようとしている。
彼への強い想いに胸をかきむしられることも減ってきた。
新たな出逢いを探したいところだが、夫と離婚しない限り、それは出来ない。
結婚生活を続ける限り、パートナーを探す行為は、【秘密の行動】になってしまうのだから。
本当の本当を言えば、愛情が無くなった時点で、その相手から離れるのが、最も健全だ。でも私は、恐くて離婚を切り出すことができないでいる。
何が恐いのかって?
子供のためかって?
母親としては、そう答えた方が格好つくのだろうが、そうではない。
それに、子供だって、「あなたの為にお母さんは我慢しているのよ」なんて雰囲気をかもし出されたら、さぞ負担だろう。
私は、自分が貧乏になるのが恐いのだ。"誰それの妻"という、社会的地位を失うのも恐い。
結婚後10年間同居したパワハラ姑とモラハラ夫のもとで、夫の自営業を手伝いながら、子育てと家事全般をやってきた。
ストレスからうつ病とメニエール病を発症し、1日を生きるのさえしんどい時が何年も続いた。
そんな中で出逢いがあり、恋に落ちた。
恋人の献身的な支えのお陰で、うつ病は完治し、メニエール病も寛解した。
だいぶ楽に生きられるようになったものの、この夫と、今後も人生を共にするのかと思うと、胸が苦しくなる。
私の真の幸福をはばむラスボス級の恐れは、豊かな生活基盤と、高度な専門職にある男の妻という社会的地位を失うことだ。
私は、この人がいなくなったら生きられないと感じていた最愛の男を手放した。なのに、嫌いな夫のことは手放せないでいる。それほど、生活の安定を失うのが私には恐いのだ。
こんなことで、私は、長年切望している理想的パートナーシップを、新たに実現することができるのだろうか?